2013年8月27日火曜日

道路を介したセシウム移動(沿道土壌調査)

沿道土壌調査


  「あがのラボ」では阿賀野市内の国道49号線(若松街道)、国道290号線、県道27号線、県道55号線、県道255号線などの沿道に堆積している土壌および、道路に隣接する近傍の土壌を採取し、土壌中の放射性セシウムの濃度を調べている。     

   この調査の目的は、放射性物質が雨や風などの自然現象だけでなく、道路を介した車の移動によって汚染地帯から非汚染地帯へと移動・拡散すると予測できるので、福島県の会津地方に近い位置にあり発災当時には一般土壌の汚染が極めて低い阿賀野市内にどのくらい道路を介した放射性物質の持ち込が発生しているのかを明らかにすること。



サンプリング地点と放射能濃度(Bq/kg)

沿道土壌(黄色)、近傍土壌(緑)


 沿道土壌には、福島原発由来の放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)が検出されるが、近傍の土壌からは殆ど検出されないことから、道路の両端には周囲よりも多量の放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)が存在することが判ってきた。 

 沿道土壌に含まれる放射性セシウム濃度は、<160 Bq/kg程度で道路の交差点や坂道の下などで高くなる傾向が認められる。 沿道土壌の放射性セシウムは、阿賀野市内の神社・寺院等から採取した一般土壌の放射性セシウム濃度(9〜33 Bq/kg)と比較しても2倍以上の濃度で、福島原発由来の短半減期Cs-134が検出できる。 原発事故初期に、大気中から道路上に降下した放射性物質は雨などにより道路の両側に集積し側溝に洗い流されと考えられるが、2年半が経過しても沿道に高濃度で存在することから「初期の降下物」が残留していると考えるよりも、車のタイヤ等に付着した放射性物質が汚染地域から新たに運ばれていると考える方が説明が付く。


沿道土壌と近傍土壌のγ線スペクトル





2013年7月15日月曜日

昆虫飼育マット

 昆虫マット

  夏休みの自由研究に使用されるカブトムシやクワガタなどの昆虫飼育用マットをダイソーで入手し、放射性セシウムによる汚染を調査してみました。

  昆虫マットには、「腐葉土」や「朽木粉砕おがくず」などが使用されていますので、放射性セシウムによる汚染が疑われています。(多くのメーカーでは、汚染土の高い東日本を避けて、西日本製の「腐葉土」や「朽木粉砕おがくず」を使用しています。)



 ◎ダイソー昆虫マット(「昆虫マット」高発酵・高栄養・プロテイン配合・腐葉土)
    597グラム、50,000秒
    Cs-137(検出限界未満、<1.3 Bq/kg)
    Cs-134(検出限界未満、<1.3 Bq/kg)



◎ハイグレード昆虫マット(「くぬぎ伝説」くぬぎ・ならの朽木を粉砕)
    476グラム、50,000秒
    Cs-137(検出限界未満、<1.7 Bq/kg)
    Cs-134(検出限界未満、<1.6 Bq/kg)





  ※γ線スペクトル上には明確なピークは確認できません。 高エネルギー側のCs-134の領域にはピークは確認できません。 一方、低エネルギー側のCs-134の領域にはBi-214の影響が見られます。 「昆虫マット(朽木、「くぬぎ伝説」)」のCs-137に相当する部位に僅かな膨らみが確認できます。




2013年7月8日月曜日

放射性セシウムが路傍の「コケ」に含まれている

「コケ」(セシウム汚染の指標)

  地衣類やコケが放射性セシウムを濃縮することが報告されているので、阿賀野市に自生している「苔(コケ)」を採取し、γ線スペクトルを観察してみました。

   採取した「苔」から土壌を取り除くために水洗いし、水切り後に新聞紙上に広げて乾燥後NaIシンチレーションカウンターで測定し、ガンマー線スペクトルを得た。

  γ線スペクトル上には、福島原発事故由来の放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)に加えて、宇宙線により大気中に生成する放射性ベリリウム(Be-7)のピークが観察された。  同じ阿賀野市内で採取した「コケ」でも、放射性セシウムが含まれていない「コケ」もあるため、現在、「コケ」に含まれるセシウム濃度と採取地点との地理的関係から放射性セシウムの供給源を調査中






  ※大気中のBe-7、天然のラドンやその娘核種は、植物の呼吸によって植物体の葉に取り込まれるため、しばしば植物サンプルのγ線スペクトルに現れる。 半減期の短いラドンの娘核種(Bi-214、Pb-214)はエイジングによって減少するため、γ線スペクトルで区別可能。

学校給食食材検査

学校給食食材検査

  東日本における学校給食食材検査の実施状況を、文部科学省の公表データーから抜粋して、まとめてみました。 食材のスクリーニングで使用されているの はNaIシンチレーション検出器が多く、検出下限値も最大で25 Bq/kgを採用しており、厚生労働省が定める「下限値 25 Bq/kg(スクリーニングの技術的要件)」を満たしているが、新潟県のみ基準に適合していない状況が継続している



学校給食における放射性物質の検査結果(文部科学省)
食品中の放射性セシウムスクリーニング法の一部改正について(厚生労働省)

用水路堆積泥中の放射性セシウム濃度変化

用水路堆積泥の放射性セシウム

 昨年に引き続いて用水路に堆積している「泥」を採取し、放射性セシウムの濃度を求めた。 定点測定の数値変動を見ると、全体的に下降傾向は認められるが、流れが緩やかな地点では変動が少ない。

 用水路と同様に、阿賀野川の河川水を水道源水として使用している新潟市や阿賀野市の浄水発生土数値も放射性セシウム合算100 Bq/kg 以上で推移している。

 

2013年3月20日水曜日

お知らせ

お知らせ

 昨年(2012年)、「あがのラボ」が独自に調査した阿賀野市内の環境放射能調査について、お話する機会をいただきました。 興味をお持ちの方は是非に足をお運び下さい(無料です)



   尚、大変申し訳ありませんが、測定結果の公表が遅れております。 近日中にまとめて公表いたします。

2012年11月22日木曜日

土壌試料調製マニュアル

土壌試料調製マニュアル


  土壌サンプルの測定依頼が増加しており、試料調製に関するお問い合わせが多数寄せられております。
 
 「あがのラボ」では、以下の様な土壌試料調製法を用いていますので、参考にして下さい!  土壌の粒度土壌中の水分や異物が測定容器への充填度及び放射能測定値に影響を与えますので、充分な乾燥粒度の均一化が必要です。

① 採取した土壌をトレー上に4〜5枚重ねた新聞紙に広げ、天日乾燥(風乾)。 雨天や冬場には新聞紙に包んで屋内に放置。 時間がない場合には、電子レンジ加熱、フライパン・鍋等に入れての加熱乾燥も可能です。
② 土壌の塊を移植ゴテ等により細かく砕き、乾燥を促進する!
③ 目視で大きな異物(木の葉、木の枝、草、小石など)を確認したら取り除く!
④ 乾燥がある程度進んだら、ふるいにかけて土壌粒度を均一にする。
⑤ 移植ゴテ等で上下を混和して土壌の色が均一になるまで乾燥!
⑥ 乾燥土壌をビニール袋に回収する。
  ※パウダー状になった土壌は風で飛散しやすいので作業者は注意を払って下さい!




  ★連絡先
   あがのラボ (あがの市民放射線測定室) 担当:村上
           0250-62-3102  /  080-3208-6563
   E-mail  : purplenao@gmail.com
   Twitter  : @purplewatch
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2012年11月13日火曜日

冬に向けての定期点検

測定器のメインテナンス中


   気温が下がって、間もなく冬到来の季節となりました。 現在「あがのラボ」では冬期間の測定室気温低下に対応するため、エアコンの設定温度を18±2℃に変更しました。 これに伴い、γ線測定器の自然計数を再測定しています。

   今回より、検出限界値をより低減する目的で自然計数の測定時間を40,000秒に延長しました。 予定ではCs-134、Cs-137の検出限界が<1Bq/kgとなるはずです。 更に、来春には低レベル放射能検出を短時間で行えるように遮蔽の強化を計画しています。





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2012年11月1日木曜日

土壌汚染調査(その1)

土壌汚染調査(その1)


  福島原発事故による土壌の放射能汚染を調査するため、阿賀野市及び周辺地域の土壌を採取し放射性セシウムの放射能濃度を求めてみました。

   土壌採取は、土壌表面が農作業により撹拌される畑や水田を避けて、居住地近くにある神社等を選んで、数点からの表面土(〜深さ5cm)を採取した。
  比較対象として、福島県に近く、きのこ等のセシウム汚染が確認されている阿賀町の土壌も調査した。


 測定結果

    阿賀町鹿瀬で採取した土壌からは、放射性セシウムのCs-137Cs-134が検出され、福島原発事故による汚染が確認できた。 一方、その他の地点では放射性セシウムは検出限界未満か検出されてもCs-137のみで、直接的な福島原発事故の影響を確認できなかった。 検出限界未満となった地点のγ線スペクトル上には僅かではあるがCs-137の存在が確認できるので、Cs-137の起源は過去の原爆実験やチェルノブイリ事故によるものと推測している。

    現時点では、阿賀野市の一般土壌に関しては明確な福島原発事故による汚染が認められていないが、阿賀野市に隣接する阿賀野川河川敷の汚染かんがい用水路に堆積する汚泥の汚染が確認されているので、それらの移動拡散による二次汚染に注意を払う必要がある。
    
   
                            測定時間:30,000秒
土壌採取地点 採取日 測定日 放射性セシウム合算
(Bq/kg(乾))
阿賀野市寺社 2012-10-09 2012-10-18     33
阿賀野市上江端 2012-10-15 2012-10-18     20
阿賀野市里 2012-10-19 2012-10-23     15
阿賀野市小松 2012-10-24 2012-10-29     15
阿賀野市大室 2012-10-03 2012-10-06     13
阿賀野市田山 2012-10-22 2012-10-26       9
阿賀野市中央町 2012-10-15 2012-10-19 検出限界未満(<3.0)
阿賀野市中島町 2012-10-17 2012-10-19 検出限界未満(<3.0)
阿賀野市山口町 2012-10-19 2012-10-22 検出限界未満(<3.0)
阿賀野市月崎 2012-10-19 2012-10-22 検出限界未満(<3.2)
阿賀野市関屋 2012-10-22 2012-10-25 検出限界未満(<3.2)
阿賀野市小浮 2012-10-15 2012-10-20 検出限界未満(<3.0)
阿賀町石間 2012-10-24 2012-10-29     10
阿賀町鹿瀬 2012-10-24 2012-10-28     74
                              ※Cs-137のみ検出






解説
   土壌や井戸水等の検体を測定する場合に、検体中に含まれる天然の放射性核種(Bi-214、Pb-212、Tl-208など)が放射性セシウムのγ線エネルギーと似かよっているために誤検出を生じることがあります(下図参照)。
   天然核種と比べて大量に放射性セシウムが含まれている場合は、天然核種の妨害があっても有意に放射性セシウム濃度を求めることができますが、含まれている放射性セシウムが相対的に少量の場合に天然核種(特にCs-134のγ線エネルギーと似かよったBi-214)の影響が出てしまいます。

   今回の測定でもBi-214の影響のため誤検出(Bi-214をCs-134と間違ってしまう現象)が発生しました。「あがのラボ」では解析結果に表示された数値を評価する際に必ずγ線スペクトルを見て判定しています。
  


  今回の土壌サンプルの多くは、Cs-134が検出されずCs-137のみが検出されました。 下図に示したのは、土壌中に含まれるBi-214がほぼ同じで、Cs-137のみが異なる場合のγ線スペクトルです。   現時点では、半減期2年のCs-134が完全に消えていませんのでCs-134とCs-137が同時に検出されることを根拠に福島原発事故の影響を確認できますが、数年後にはCs-134の検出が困難となり、対象核種がCs-137のみとなってしまい、「原発事故による汚染だ!」という言及もできなくなってしまいます。 その意味で、早期の汚染実態調査が重要になっています。




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2012年10月23日火曜日

放射性セシウム濃縮測定法の検討

放射性セシウム濃縮測定法の検討


   水道水、河川水、灌漑用水、湖沼水等に含まれる放射性セシウムの濃度は極端に低く、NaIでは検出限界を超えております。 そこをなんとか有意に測定できないものかと濃縮測定法の検討を始めました。

   本来は、水試料を加熱濃縮や減圧濃縮して放射性セシウムの濃度を高めれば良いのですが、濃縮過程に時間を要することや測定時に妨害となる岩石由来の天然放射性核種も濃縮してしまうため、セシウムの選択的濃縮法が要求されるわけです。 そこで、比較的安価なゼオライトを利用することにしました。

   ゼオライトはイオン交換とふるい効果により広いpH範囲でCs吸着能(>90%)を持っていることが知られており、放射性セシウムの除去回収に広く利用されています。 未使用のゼオライト【モルデン沸石、(Ca,K2,Na2)[AlSi5O12]2・7H2O】結晶をセシウム汚染水に投入すると、ゼオライトに包含されていたCa+、K+、Na+が溶液中のCs+と置き換わることで、Cs+の回収ができるわけです。 ただし、イオン選択性はCs+>NH4+>>K+>Na+となっており、水中にアンモニウムイオンが多量に含まれる汚れた水やNa+が大量に含まれる海水などでは強く妨害を受けます。
  また、ゼオライト(1g)のセシウム吸着交換能は約100〜200mgCs/gと大きく、非放射性のCsが含まれていたとしても放射性セシウムはほぼ回収するだけの充分な能力があります。


   一定量の水試料に既知量のゼオライトを投入し、撹拌後にゼオライトと水を分離する操作を繰り返します。 最終的にセシウムが吸着濃縮されたゼオライトのみをNaIで測定するという方法です。 「継続的な撹拌法?」「水試料の必要量?」等の問題はいくつか存在しますが実験としてトライしてみます。

   計画では、数リットル単位で水試料を交換し、その都度回収ゼオライトのスペクトルを観測して、試料水の必要量を見積もることにしています。 また、事前に測定した精製水洗浄ゼオライトには、天然由来の放射性核種は観察されますが放射性セシウムのピークは確認できませんでした。 ゼオライトが汚染されていないことを確認済みです。

   なお、プルシアンブルー (Prussian blue)やその誘導体もセシウムに対して高い吸着能を持っていますので、濃縮捕集剤としての利用も考えられますが、水との分離方法やセシウム交換容量等においてゼオライトには劣るため今回は見送りました。 安価で取り扱いが簡単な新材料が出現すればその時にトライしてみます。



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