2015年8月1日土曜日

「新潟県南魚沼市六日町」の土壌汚染

「新潟県南魚沼市六日町」の土壌汚染

    新潟県内で汚染度が最も高いと地域と考えられている「南魚沼地域」の状況を把握するために原発事故から4年を経過した2015年7月7日に、幾つかの土試料をサンプリングし放射性セシウム濃度(Bq/kg)を求めてみた。

サンプリング地点と測定結果

◎「沿道土壌(国道17号線)」:放射性セシウム合算 762 Bq/kg
◎ 「用水路堆積泥」:
放射性セシウム合算 436 Bq/kg
◎ 「一般土壌(神社表層)」:
放射性セシウム合算 138 Bq/kg
◎「河川敷土壌(魚野川)」:放射性セシウム合算 45 Bq/kg

    魚野川の「河川敷堆積土」は45 Bq/kgで「阿賀野川河川敷土」と比べて低い数値を示したが、神社から採取した「一般土壌」や「用水路堆積泥」、国道17号線の両脇に堆積した「沿道土壌」では阿賀野市や新潟市と比較して高い数値を示した。   南魚沼市六日町地域では、原発事故発生時に広い範囲が中程度に汚染され周囲の表層土が降雨により魚野川へと流れ込み底質土として堆積し、魚野川河川水を利用した農業用水路を介して水田に放射性セシウム汚染泥が現在も供給されているものと推測できる。


 「沿道土壌」の比較  :「南魚沼市六日町」と「新潟市」

       南魚沼市六日町で採取した「沿道土壌」で 762 Bq/kgと高い汚染を確認した。 「沿道土壌」には周囲から自動車等により汚染土が運搬され放射性セシウムが集積する傾向があり、阿賀野市の事例のように道路近隣の「一般土壌」で放射性セシウムが検出されない場合でも遠距離の汚染地域からの運搬により幹線道路の「沿道土壌」から放射性セシウムが検出されることが多々ある。 
      幹線道路は市街地の住環境に隣接しており「沿道土壌」が乾燥時に周囲に埃を舞い上げる発生源となっており、放射性セシウムの汚染拡大や将来に継続する被曝防止の観点で重要な対象と考えている。
 




  同時期に新潟市と南魚沼市六日町で採取した「沿道土壌」を比較してみると、と南魚沼市六日町の方が70倍程度汚染度が高く新潟県内では南魚沼地域の汚染が際立っていることが再確認できた。 一方、新潟市では住環境における「一般土壌」の汚染は極めて低く、移動や濃縮が発生すると考えられる「沿道土壌」に於いても低いレベルに留まっていることが判った。







2015年7月29日水曜日

用水路堆積泥中の放射性セシウム濃度変化

用水路堆積泥中の放射性セシウム濃度変化(2012年〜2015年)

      新潟県阿賀野市内の灌漑用水は、福島県会津地方を源流とする阿賀野川の河川水を利用している。 取水口から離れた末端の用水路では、幹線用水路と比べ極端に流速が落ちるため用水中の濁り成分が沈殿して用水路に「泥」の堆積が発生する。  2012年から支線用水路に堆積した泥中の放射性セシウム濃度を調査しているが、個々のサンプリング地点の放射性セシウム濃度(Bq/kg)が2012年では大きく異なっていたが、最近はいずれの地点も減少傾向にあり約100Bq /Kg程度に低下している。

      この調査とは別に、新潟市水道局が実施している阿賀野川河川水を利用した水道浄水場に於ける「脱水汚泥中の放射性セシウム濃度」の調査でも阿賀野川の河川水汚泥の放射性セシウム濃度が約100 Bq/kg程度で安定している。


浄水場発生土中の放射性セシウム(阿賀野川と信濃川)

      原発事故初期(2011年)に高濃度に汚染された河川泥が阿賀野市の用水路の各所に沈殿堆積していたが、時間とともに下流へと移動し、現在では何れの地点でも約100Bq /Kg程度まで減少していると考えられる。 確認された減少傾向が今後も継続すれば用水路を介した放射性セシウム汚染泥の水田への流入が「米」への放射性セシウムの移行を引き起こすことは考えにくいが、阿賀野川上流で洪水等が発生することで、下流域に高濃度の放射性セシウム汚染泥が新たに運ばれてくる可能性が否定できないので、今後も継続した監視が必要と考えられる。




◎用水路堆積泥のサンプリング地点
    ①阿賀野市沖通:右岸幹線用水路(大荒川用水路)の支線用水
    ②阿賀野市熊堂村新田:右岸幹線用水路(高関用水路)の支線用水
    ③阿賀野市法柳新田:新江幹線用水路の支線用水
    ④新潟市北区上大月:西部幹線用水路(長浦1号用水路)の支線用水









2014年4月23日水曜日

セシウム汚染泥の距離による変動

用水路堆積泥のセシウム汚染(西部幹線用水路)

  阿賀野市には「阿賀野川土地改良区」が管理する阿賀野川河川水を利用した用水路網が存在する(図参照)。   これまでに、「あがのラボ」では幹線用水路の末端地域の支線用水路に堆積する用水路泥中の放射性セシウム濃度の経年変化を調査してきた(阿賀野川堆積泥、用水路堆積泥(2012〜2013))。  その結果、流速が小さい末端支線水路には2年半を経過しても未だに約80〜300 Bq/kgの汚染泥が存在すること、大雨等の気象条件で変動することなどが次第に判ってきた。

    今回は、幹線用水路の上流から下流にどのように汚染泥が分布しているかを調べるため、阿賀野市のほぼ中央を流れる「西部幹線用水路ー長浦2号用水路」を対象に、幹線用水路から水田への取水口付近の堆積泥を採取し、放射性セシウム濃度を求めた。

  

なお、測定試料採取日の2014年4月2日で用水路への春季通水は実施されていない。

 

測定結果

 Cs-137+Cs-134 放射能濃度(Bq/kg) 

① 阿賀野市寺社           20

②阿賀野市小境            26

③阿賀野市下ノ橋         69

④阿賀野市五郎巻         92

⑤新潟市北区長場          8

 

考察

  幹線水路取水口近傍の支線用水路に堆積した泥に含まれる放射性セシウム濃度は上流(阿賀野市寺社)から下流(阿賀野市五郎巻)に向けて上昇傾向にあるが、最も下流地域(新潟市北区長場)では極端に低くなっていた。   今回の結果からは断定できないが、福島第1原発事故発生時に用水路に流入した高濃度汚染泥が、水流によって希釈されながら下流へと流されるが、最も濃度の濃い部分はゆっくりと数年をかけて下流に流れて行くため現時点では「阿賀野市五郎巻」付近にその先端が存在していると考えられる。



2014年4月21日月曜日

福島県の土壌汚染

福島県の土壌

阿賀野市の「原発ゼロの会」の視察に同行した際に採取した土壌サンプルの測定結果です。

 福島県富岡町では、44万ベクレル/Kgものセシウム汚染土壌が存在していました。 阿賀野市から富岡町に向かう際の高速道PA土壌にも数千ベクレル/Kgの土壌がありました。(写真は津波で破壊された富岡駅)



測定結果の報告書

福島視察.pdf

 

2013年10月13日日曜日

阿賀野川堆積泥、用水路堆積泥(2012〜2013)

阿賀野川堆積泥、用水路堆積泥(2012〜2013)


 昨年度に引き続き、阿賀野川河川敷堆積泥と用水路堆積泥の定点測定を実施した。

 阿賀野川河川敷堆積泥

2013年9月に、阿賀野市安田運動公園脇の右岸阿賀野市下里(新潟市満願寺浄水場対岸)右岸から、河川敷に堆積した泥を採取し、乾燥後にふるいに掛けて異物を取り除いた試料を作成し測定検体とした。 今回の試料採取は台風18号の影響で阿賀野川の増水が発生した後に実施した。

   福島第1原発で放出された放射性セシウムは、阿賀野川上流域の会津地方に降り注ぎ土壌に沈着し、2011年7月に発生した「新潟福島豪雨」によって下流に運ばれて、増水によって冠水した阿賀野川下流域の河川敷に堆積したと考えられている。

   「新潟福島豪雨」以後は、下流域の河川敷が冠水する程の増水が発生していないので、堆積した泥の中の放射性セシウムは徐々に物理的半減期に従って減少傾向にあったが、2013年9月の台風18号による増水で新たに河川敷が泥によって覆われることになった。 増水の直後にサンプリングした2地点の放射能濃度は約270 Bq/kg と大幅に増加した

  福島原発事故から既に2年半も経過しているが、阿賀野川を介した放射性セシウムの移動は今もなお発生しており、大雨時には河川の混濁により大量の高濃度汚染泥が運ばれて来るものと考えられる。


用水路堆積泥

  2012年に引き続き、2013年6月と10月に阿賀野市法柳新田、新潟市上大月、阿賀野市熊堂、阿賀野市沖通の4地点から支線用水路に堆積している泥を採取し、含まれている放射性セシウム濃度を求めた。
  阿賀野市沖通の放射性セシウム濃度は2013年に急激に減少しているが、他の3地点は減少が少ないか、逆に増加している地点も存在した。
 これらの支線用水路は幹線用水路から距離があり、流速も遅いことが確認されているので、用水路水と共に運搬されてきた泥成分が沈殿しやすい状況にあるのは確実と考えられる。 しかし、阿賀野川から取水された用水に含まれる泥成分が、どの位の時間で末端支線水路に移動しているのかは不明であるため、観察された放射性セシウムの濃度変化の解釈は難しい!

 

  今回の2013年10月サンプリング時に、通常は大量の水が流れている「新江用水路」に通水が止められていたので、幹線用水路に堆積している「泥」を採取することができた。

  その放射能は、放射性セシウム合算で 65 Bq/kg と予想より低く、「新江用水路」の支線となる阿賀野市法柳新田の放射能 233 Bq/kg と比べても1/4となっていた。 このことは、一旦、流速の遅い支線用水路に入って沈殿した「泥」成分は、かなりの時間をかけてゆっくりと下流に押し流されている可能性が大きい。 
 今後、同一用水路の上流から下流に向かって放射性セシウム濃度の変化を追跡する予定。 






 

2013年8月27日火曜日

道路を介したセシウム移動(沿道土壌調査)

沿道土壌調査


  「あがのラボ」では阿賀野市内の国道49号線(若松街道)、国道290号線、県道27号線、県道55号線、県道255号線などの沿道に堆積している土壌および、道路に隣接する近傍の土壌を採取し、土壌中の放射性セシウムの濃度を調べている。     

   この調査の目的は、放射性物質が雨や風などの自然現象だけでなく、道路を介した車の移動によって汚染地帯から非汚染地帯へと移動・拡散すると予測できるので、福島県の会津地方に近い位置にあり発災当時には一般土壌の汚染が極めて低い阿賀野市内にどのくらい道路を介した放射性物質の持ち込が発生しているのかを明らかにすること。



サンプリング地点と放射能濃度(Bq/kg)

沿道土壌(黄色)、近傍土壌(緑)


 沿道土壌には、福島原発由来の放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)が検出されるが、近傍の土壌からは殆ど検出されないことから、道路の両端には周囲よりも多量の放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)が存在することが判ってきた。 

 沿道土壌に含まれる放射性セシウム濃度は、<160 Bq/kg程度で道路の交差点や坂道の下などで高くなる傾向が認められる。 沿道土壌の放射性セシウムは、阿賀野市内の神社・寺院等から採取した一般土壌の放射性セシウム濃度(9〜33 Bq/kg)と比較しても2倍以上の濃度で、福島原発由来の短半減期Cs-134が検出できる。 原発事故初期に、大気中から道路上に降下した放射性物質は雨などにより道路の両側に集積し側溝に洗い流されと考えられるが、2年半が経過しても沿道に高濃度で存在することから「初期の降下物」が残留していると考えるよりも、車のタイヤ等に付着した放射性物質が汚染地域から新たに運ばれていると考える方が説明が付く。


沿道土壌と近傍土壌のγ線スペクトル





2013年7月15日月曜日

昆虫飼育マット

 昆虫マット

  夏休みの自由研究に使用されるカブトムシやクワガタなどの昆虫飼育用マットをダイソーで入手し、放射性セシウムによる汚染を調査してみました。

  昆虫マットには、「腐葉土」や「朽木粉砕おがくず」などが使用されていますので、放射性セシウムによる汚染が疑われています。(多くのメーカーでは、汚染土の高い東日本を避けて、西日本製の「腐葉土」や「朽木粉砕おがくず」を使用しています。)



 ◎ダイソー昆虫マット(「昆虫マット」高発酵・高栄養・プロテイン配合・腐葉土)
    597グラム、50,000秒
    Cs-137(検出限界未満、<1.3 Bq/kg)
    Cs-134(検出限界未満、<1.3 Bq/kg)



◎ハイグレード昆虫マット(「くぬぎ伝説」くぬぎ・ならの朽木を粉砕)
    476グラム、50,000秒
    Cs-137(検出限界未満、<1.7 Bq/kg)
    Cs-134(検出限界未満、<1.6 Bq/kg)





  ※γ線スペクトル上には明確なピークは確認できません。 高エネルギー側のCs-134の領域にはピークは確認できません。 一方、低エネルギー側のCs-134の領域にはBi-214の影響が見られます。 「昆虫マット(朽木、「くぬぎ伝説」)」のCs-137に相当する部位に僅かな膨らみが確認できます。




2013年7月8日月曜日

放射性セシウムが路傍の「コケ」に含まれている

「コケ」(セシウム汚染の指標)

  地衣類やコケが放射性セシウムを濃縮することが報告されているので、阿賀野市に自生している「苔(コケ)」を採取し、γ線スペクトルを観察してみました。

   採取した「苔」から土壌を取り除くために水洗いし、水切り後に新聞紙上に広げて乾燥後NaIシンチレーションカウンターで測定し、ガンマー線スペクトルを得た。

  γ線スペクトル上には、福島原発事故由来の放射性セシウム(Cs-137、Cs-134)に加えて、宇宙線により大気中に生成する放射性ベリリウム(Be-7)のピークが観察された。  同じ阿賀野市内で採取した「コケ」でも、放射性セシウムが含まれていない「コケ」もあるため、現在、「コケ」に含まれるセシウム濃度と採取地点との地理的関係から放射性セシウムの供給源を調査中






  ※大気中のBe-7、天然のラドンやその娘核種は、植物の呼吸によって植物体の葉に取り込まれるため、しばしば植物サンプルのγ線スペクトルに現れる。 半減期の短いラドンの娘核種(Bi-214、Pb-214)はエイジングによって減少するため、γ線スペクトルで区別可能。

学校給食食材検査

学校給食食材検査

  東日本における学校給食食材検査の実施状況を、文部科学省の公表データーから抜粋して、まとめてみました。 食材のスクリーニングで使用されているの はNaIシンチレーション検出器が多く、検出下限値も最大で25 Bq/kgを採用しており、厚生労働省が定める「下限値 25 Bq/kg(スクリーニングの技術的要件)」を満たしているが、新潟県のみ基準に適合していない状況が継続している



学校給食における放射性物質の検査結果(文部科学省)
食品中の放射性セシウムスクリーニング法の一部改正について(厚生労働省)

用水路堆積泥中の放射性セシウム濃度変化

用水路堆積泥の放射性セシウム

 昨年に引き続いて用水路に堆積している「泥」を採取し、放射性セシウムの濃度を求めた。 定点測定の数値変動を見ると、全体的に下降傾向は認められるが、流れが緩やかな地点では変動が少ない。

 用水路と同様に、阿賀野川の河川水を水道源水として使用している新潟市や阿賀野市の浄水発生土数値も放射性セシウム合算100 Bq/kg 以上で推移している。